環境正義とは? climatejustice.info

気候変動で熱中症が増加:影響を受けやすい人たちとその理由

Tags: 熱中症, 気候変動, 健康被害, 高齢者, 環境正義

気候変動と夏の暑さ:なぜ特定の人たちがつらい思いをするのか

近年、日本の夏は年々暑くなっているように感じられるかもしれません。ニュースでは「観測史上最高の暑さ」といった言葉を耳にすることも増えました。この暑さによって、特に心配されるのが「熱中症」です。

熱中症は、めまいや頭痛、ひどい場合には命に関わることもあります。この熱中症による被害が、実は全ての人に同じように降りかかっているわけではない、という現実があります。

なぜ、気候変動によって増える暑さが、特定の人たちに偏って大きな影響を与えているのでしょうか。ここでは、その理由を分かりやすくご説明します。

地球温暖化が進むと、なぜ熱中症が増えるのか?

私たちは今、地球の平均気温が少しずつ上がっていく「地球温暖化」という問題に直面しています。地球温暖化の主な原因は、人間が石油や石炭などを燃やして出す「温室効果ガス」が増えすぎたことです。

この温暖化が進むと、夏に「熱波(たいへん暑い日が長く続くこと)」が起きやすくなったり、一度起きた熱波がより強くなったりすることが分かっています。つまり、地球温暖化は、私たちの夏をより危険なものにしているのです。

熱中症になりやすいのは、どんな人たち?

一般的に、熱中症になりやすいのは、体温をうまく調節するのが難しい小さなお子さんや高齢の方、持病のある方です。また、屋外で作業をする方や、慣れない暑さの場所にいる方も注意が必要です。

しかし、気候変動によって暑さのレベルが上がると、これまで熱中症になったことのない健康な方でも、注意しないと危険な状況になることがあります。そしてさらに、特定の社会的な状況にある方々が、より熱中症のリスクにさらされやすいという問題があるのです。

暑さの影響が「偏る」のはなぜ?

気候変動による暑さの影響が、すべての人に平等ではない背景には、いくつかの理由が考えられます。

経済的な状況による差

暑さをしのぐために、エアコンを使うのが効果的ですが、エアコンを買ったり、電気代を払ったりするにはお金がかかります。経済的に余裕がないご家庭では、エアコンがなかったり、あっても電気代を気にして使えなかったりすることがあります。

また、住んでいる家の作りも影響します。断熱材がしっかり入っていない古い家や、日差しを遮るものがない家は、家の中に熱がこもりやすくなります。良い住環境に住むためには、経済的な負担がかかる場合があります。

住んでいる場所による差

都市部では、建物や道路にコンクリートやアスファルトが多く、熱を吸収して夜になっても気温が下がりにくい「ヒートアイランド現象」が起きています。そのため、同じ地域内でも、緑が多い場所と比べて気温が高くなることがあります。

また、自然災害(洪水や土砂災害など)が発生した後、自宅に戻れずに避難所で生活したり、仮設住宅で過ごしたりする方もいます。このような環境では、十分な暑さ対策が難しくなる場合があります。災害は、特定の地域に集中して発生することがあり、その地域の住民がまとめて困難に直面することがあります。

健康状態や年齢による差

先ほど触れたように、高齢の方や持病のある方は、若い健康な方に比べて熱中症になりやすい傾向があります。気候変動による記録的な暑さは、こうした方々にとって、これまで以上に危険な状況を作り出します。

例えば、持病のために水分補給を控えている方や、一人暮らしで体調の変化に気づきにくい高齢者の方は、特に注意が必要です。

情報へのアクセスと対策

暑さに関する情報(今日の気温予報、熱中症警戒アラートなど)や、熱中症の予防方法に関する情報が、全ての人に同じように届くとは限りません。インターネットを使わない方や、テレビやラジオを見る機会が少ない方もいらっしゃいます。

特に高齢者の中には、こうした情報から取り残されてしまい、危険に気づくのが遅れるケースも考えられます。

まとめ:暑さの問題は「不公平」を考えるきっかけに

気候変動による暑さ、特に熱波の増加は、私たち全員に関わる問題です。しかし、その影響は、経済的な状況、住んでいる場所、年齢や健康状態、そして情報へのアクセスといった様々な要因によって、特定の層に大きく偏って現れています。

このように、気候変動による悪影響が、社会的に弱い立場にある人々や特定の地域に、より重くのしかかる状況は、「環境正義」という考え方の中で議論されています。

熱中症の増加という身近な問題を通して、気候変動がもたらす「不公平」な影響について考え、私たち一人ひとりが、そして社会全体として、どのように対策を進めていくべきなのかを考えるきっかけにしていただければ幸いです。