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気候変動による災害からの立ち直り:避難と復旧でなぜ差が出るのか

Tags: 気候変動, 災害, 避難, 復旧, 不公平, 地域社会, 高齢者

気候変動と増える災害

近年、地球温暖化などの気候変動の影響により、日本でもこれまでに経験したことのないような大雨や大型の台風、猛烈な暑さといった異常気象が増えています。これにより、洪水や土砂崩れ、暴風、熱波といった災害が、これまで以上に頻繁に、そして大きな規模で発生するようになっています。

災害に遭うこと自体、大変つらい経験です。しかし、困難はそこで終わりません。災害が起きた後、安全な場所に避難したり、壊れてしまった自宅を直したり、元の生活を取り戻すための「立ち直り」の道のりも、大きな負担となります。

さらに、この立ち直りの過程にも、住んでいる場所や、それぞれの人が抱える状況によって、大きな違いが出てくることがあります。なぜ、災害からの立ち直り方に差が生まれてしまうのでしょうか。このことについて、一緒に考えていきましょう。

避難生活における課題とその違い

災害が発生し、自宅に留まるのが危険だと判断された場合、避難所に移動して生活することがあります。避難所は、命を守るための大切な場所ですが、そこで過ごす環境は、場所によって大きな違いが見られます。

避難所の環境

避難所として使われる建物(学校の体育館、公民館など)によって、広さや設備の充実度が異なります。プライバシーが保たれにくい大部屋での共同生活になったり、段ボールベッドや間仕切りが十分に用意されていなかったりすることもあります。

また、高齢の方や障がいのある方にとっては、避難所に段差が多い、トイレが使いにくい、夜間に歩き回るのが難しいなど、バリアフリーの面で課題がある場所も少なくありません。アレルギー対応食や、持病のための薬の管理など、特別な配慮が必要な場合に、十分なサポートが得られないこともあります。

避難行動と情報

災害が起きそうだという情報や、避難所が開設されたという情報を、全ての人が同じように受け取れるわけではありません。インターネットを使わない方、耳が聞こえにくい方、日本語が十分に理解できない方などは、大切な情報を受け取るのが遅れたり、情報そのものにたどり着けなかったりすることがあります。

また、避難場所まで安全に移動できる手段がない方や、歩行が困難な方、一人暮らしで手助けを頼める人が近くにいない方など、避難行動自体が難しい人もいます。ペットを飼っている方が、一緒に避難できる場所が見つからず困る、といった問題も起こります。

(図で説明するなら) 左側に「設備が整った避難所(個別のスペース、清潔なトイレ、暖房など)」のイメージ、右側に「限られたスペースで多くの人が過ごす避難所(雑然としている、プライバシーがないなど)」のイメージを並べ、「避難所の環境には差があります」といった言葉を添えると、視覚的に理解しやすくなります。

また、「情報を受け取りにくい人」として、携帯電話を見て困っている高齢者のイラストや、耳が聞こえにくいサインを持つ人のイラストなどを描くと、誰が情報アクセスに困難を抱える可能性があるかを具体的にイメージできます。

被災した後の復旧における課題とその違い

自宅が被害を受けた場合、それを修理したり、必要に応じて建て直したりする必要があります。この「復旧」の過程も、多くの困難を伴い、その進み具合には個人や地域によって差が出やすい部分です。

経済的な負担と支援制度

自宅の修理や再建には、大きなお金がかかります。保険に入っていても全額がカバーされるとは限りませんし、経済的に余裕がない家庭では、自己負担分を捻出するのが非常に難しい場合があります。災害によって仕事を失ったり、収入が減ったりすると、その負担はさらに重くなります。

国や自治体からは、被災した方への支援制度(義援金、補助金、融資、税金の減免など)が提供されます。しかし、これらの制度を知らなかったり、申請手続きが複雑で分からなかったりして、必要な支援を受けられない人がいます。特に、役場になかなか行けない高齢者や、手続きを手伝ってくれる人がいない一人暮らしの方などは、支援制度の活用が難しくなることがあります。

地域コミュニティとインフラ

災害からの復旧には、近所の人たちの助け合い(ボランティアによる片付け支援など)も大きな力となります。しかし、日頃から住民同士のつながりが強い地域と、そうでない地域では、こうした助け合いの力に差が出ることがあります。高齢化が進み、地域に住む人の数が減ってしまった地域では、若い働き手が少なく、復旧作業が進みにくいといった課題も聞かれます。

また、電気、水道、ガス、通信、道路といった生活に必要なインフラの復旧スピードも、被害の程度や、その地域が都市部か地方かなどによって差が出ることがあります。インフラの復旧が遅れると、自宅が無事でも元の生活に戻るのが難しくなります。

(図で説明するなら) 被災した家屋のイラストと共に、「修理費用」「手続き」「人手不足」といった吹き出しをつけ、「復旧には多くの課題があります」と表現する。

また、「支援制度の案内」として、たくさんの書類が積まれた机の前で困っている人のイラストを描き、「複雑な手続きで支援が受けられないことも」といった言葉を添えると、課題を具体的にイメージできます。

なぜ災害からの立ち直りに差が生まれるのか

これまで見てきたように、気候変動による災害からの避難や復旧には、様々な困難が伴い、その乗り越えやすさには個人や地域によって違いが出ます。なぜこのような差が生まれるのでしょうか。その背景には、いくつかの要因が複合的に関係しています。

これらの要因が重なり合うことで、災害による被害をより大きく受けやすく、かつ、その後の立ち直りに時間がかかったり、十分な支援を受けられなかったりする人が出てきてしまうのです。

(図で説明するなら) 円グラフや複数のアイコンで、「経済」「高齢・障がい」「地域」「情報アクセス」といった要素を表現し、これらの要素がどのように「避難・復旧の困難さ」につながるかを示す矢印を描くと、要因の関係性が分かりやすくなります。

まとめ:誰もが取り残されないために

気候変動による災害は、今後さらに増えることが予想されます。災害そのものの被害を減らす努力はもちろん大切ですが、もし災害が起きてしまった後、「誰もが等しく安全に避難でき、元の生活に戻るための支援を受けられる」ということも、非常に重要な課題です。

災害からの立ち直りに差が生まれる背景には、経済的な問題、高齢や障がいといった個人の状況、そして住んでいる地域の特性や情報へのアクセスといった、様々な社会的な要因が絡み合っています。

これらの「不公平」な状況を理解し、改善していくためには、どのような取り組みが必要でしょうか。例えば、災害情報の伝え方を工夫して、あらゆる人に情報が届くようにすること。高齢者や障がいのある方の避難や避難所生活を地域で支える仕組みを作ること。被災した方への支援制度を分かりやすくし、利用しやすくすること。そして、災害に強い地域づくりを皆で考えていくことなどが挙げられます。

気候変動による災害から、誰一人として取り残されない社会を目指すためには、こうした「立ち直りの過程における不公平」にも目を向け、具体的な対策を進めていくことが大切です。